異世界ニコニコ料理番~トリップしたのでお弁当屋を開店します~
「あ、えっと……私もどうしてここにいるのか、わからなくて……」
パンターニュ王国とか、騎士団とか、聞きなれないファンタジーな名称がバルドさんの口から飛び出す。
それにさえ思考が追いつかないのに、なぜ明らかに西洋人のような名前と容姿である彼らと自分が普通に話せているのかがわからない。
英語のテストはそこそこの点数だったが、日常会話となると別だ。
私は生まれてこの方、日本語しか話せない。
「なんにせよ、ここにいるのは危険だ。雪、それからロキとそこの……白衣の男」
さらっとウサギであるロキを受け入れているバルドさんに驚きつつも、私はまだ名前も知らない白衣の男性に視線を移す。
男性はバルドさんの鋭い眼光を前に肩を震わせたが、おずおずと名乗る。
「えっと、俺は……エドガーです」
「ならばエドガー、手を貸してくれ。俺を騎士団の駐屯地に連れて行ってほしい。それから、お前たちもついて来い。ここにいては危険だからな、保護する」
こうして、森で出会ったなんの面識もない私たちはバルドさんが身を寄せているという騎士団の駐屯地にお邪魔させてもらうことになった。