異世界ニコニコ料理番~トリップしたのでお弁当屋を開店します~
▼Menu2盗賊メシは『肉巻き』弁当
整備されていない森の道をランチワゴンで進みながら、助手席にいた私は後部座席のバルドさんとオリヴィエを振り向く。
「最初の目的地は、どこがいいかな?」
気の向くままに旅に出てしまったので、行き先を決めていなかった私たちはとりあえずパンターニュ王国を出ようと国境に向かっていた。
オリヴィエは鞄から大きな地図を取り出して開くと、少しだけ考えるように黙り込み、すぐに閃いた顔をする。
「カイエンスはどうですか? あそこは南国で、すぐそばに海があるので新鮮な魚介類が手に入ります。港の近くには漁師も船乗りも大勢いますし、お弁当を売るのに最適では?」
「働く人を元気にするお弁当、明るい雪にぴったりね」
私の膝の上に座っているロキの言葉もあって、私たちはカイエンスに行こうということになったのだが、いざ目的地が決まったところでパスンッと嫌な音がした。
その瞬間、車内が大きく揺れて、私はとっさにロキが飛んでいかないように抱きかかえる。
「な、なんです!?」
オリヴィエの悲鳴が車内に響き、ランチワゴンがつんのめるような形で止まる。
心臓がばくばくと大きな音を立てる中、何事かと運転席を見るとエドガーはこちらに手を伸ばして、私の頭を上から押さえた。