異世界ニコニコ料理番~トリップしたのでお弁当屋を開店します~
駐屯地は森の開けた場所にあった。
いくつか幕舎が設営されていて、騎士の皆さんは焚き火の前に座り込み、身を寄せ合うようにして休息をとっている。
「バルド団長……バルド団長ですか!」
騎士の皆さんはエドガーさんが抱えているバルドさんの周りに集まった。
バルドさんの身柄を騎士の皆さんに預けると、「よくぞご無事で!」「団長~っ」と涙を流しながら再会を喜んでいる。
私はエドガーさんとロキと一緒に、その光景を遠目に眺めた。
すると、しばらくしてバルドさんがこちらを見る。
「俺たちはこれから食事をとるんだが、お前たちもどうだ」
その提案に私はエドガーさんとロキと顔を見合わせて、ぐうっとお腹を鳴らす。
お母さんのお葬式のあと、家に帰ってきてから夕飯を食べていなかったのを思い出した私はお言葉に甘えることにした。
バルドさんのあとを追って駐屯地の端にある炊き出し場に行くと、そこには干し肉や見るからに乾燥しているだろうカチカチのパンがある。
えっ、こんな質素な食事で騎士の皆さんは戦ってるの?
驚きつつも騎士の皆さんの顔を見回すと疲弊の色がにじみ、活力というものがまるで感じられない。
そんなとき、頭の中に『食べた人を笑顔に』というお母さんの声が蘇る。
私は拳を握り締めて、バルドさんの前に立った。