異世界ニコニコ料理番~トリップしたのでお弁当屋を開店します~
「僕こそ、ごめんなさい。僕がお父さんに言ったから、怪我をさせちゃったんだよね」
逆に謝られるとは思っていなかったのか、ランディは言葉が出てこないらしい。
しばらく男の子を見つめながら放心していて、見かねたノヴァが「お頭」と小声で呼びかけるとランディの肩が跳ねる。
「あ、ああ……もとは俺が悪いんだ。お前が謝る必要ねえよ。それに、盗賊相手に律儀に頭を下げる必要なんて……」
「なんで? 悪いことをしたら、『ごめんなさい』するのは当たり前だよ」
「……そうか。お前みてえに誰相手でも、わけ隔てなく接してくれるやつもいるんだな。嬢ちゃん」
ランディは潤んだ瞳で私を見上げる。
「見捨てるやつばっかりじゃねえんだな。こうして向き合ってくれる誰かもいるってこと、ちょっとは信じられそうだ」
「ランディ……うん、人はたくさんいるんだもん。冷たい人だけじゃなくて、ランディたちにあったかい人だって必ず世界のどこかにいる」
「そうだな」
噛みしめるように呟いて、ランディは男の子のとお父さんに頭を下げる。
そうして、すべきことを終えた私たちはランチワゴンに乗り込んだ。
盗賊の住処へと戻る途中、窓から吹き込んでくる風を浴びながらランディがぽつりと尋ねてくる。