異世界ニコニコ料理番~トリップしたのでお弁当屋を開店します~
「お頭はこのままでいいのか?」
その問いにランディは眉間にしわを寄せて、「なんのことだ?」と聞き返す。
「俺たちはもう、自分たちのしたいことが見えてる。真っ当に生きるために、手に職をつけるってな。だから、これからはお頭のしたいことをしてくれよ」
ノヴァの言葉に他の盗賊たちはなにかを感じ取ったのか、口々に「お頭、なにかしたいことがあんのか?」「だったら、俺たちのことは気にせずやってくれよ」と声をあげた。
「お頭は俺たちのために十分してくれた。お頭をこれ以上、俺たちに縛りつけることはしたくねえ」
「ノヴァ、俺は縛りつけられてたなんて思っちゃいねえぞ」
「お頭なら、そう言うと思ってたけどな。でも、なにかしたいと思うたび、俺たちの存在を思い出して踏みとどまったことがあっただろ」
それには心当たりがあったのか、ランディは口を閉ざす。
それで確信したのか、ノヴァは「やっぱりな」と苦笑いして、ランディの背をとんっと押した。
「皆のことは俺に任せろ。だから、お頭は風の向くまま、気の向くままに生きてくれって。ひとつの場所に留まってるよりさ、そのほうがお頭らしいって」
その言葉と盗賊たちの温かな眼差しに後押しされるように、ランディは掠れる声で「ありがとな、お前ら」とこぼして、私の前にやってくる。