ひみつ

1章 はじまりのはじまり

私は、完璧な人になりたい。


｢高瀬、後でちょっと来てくれ〜｣


担任に呼ばれた高一の春、私は決めたんだ。


｢お母さんから聞いたけど、病気の事、クラスの子には隠すのか？｣


｢はい、絶対言いたくないです。｣


｢もしもの時のことを考えて、直ぐに対処できるように...と思うけど...｣


｢大丈夫です...誰にも言いたくないんです。｣


私は、重い心臓の病気。


小中学校はろくに学校に通えなかった。


“頑張っても、20まで生きられたら奇跡だと思います。”


最後ぐらい、完璧な人生を送りたい。


無機質な病室で、必死に勉強して、ある程度の偏差値のある高校に首席で合格した。


1人の高校生として、普通の人と混ざって生活したい。


だから、病気というレッテルを貼られないように、隠したい。


｢わかった。なら、この件は、俺と他の先生たちだけ知ってることにしとくな。あと、エレベーターは、しんどい時は使ってくれていいからな。｣


｢ありがとうございます。｣


｢あと、無理しないでな。体調も、悪かったら授業抜けてもいいからな。｣


｢はい。ありがとうございます！｣