ひみつ
ちらっと先生がこっちを見た。


ニッコリして返す。


「よーい...どん!」


足を踏み込んで走る。


あれ、走れてるこれ?


「莉奈がんばれー!」


いろんな人に言われるけど...無理だ...


心臓がどくどくしてる...


脈が飛ぶ感じがわかる。


これ...やばいやつかも...


白線を超えた時、ふらっと倒れてしまった。


「莉奈!?」


一緒に走った子が駆け寄ってくれた。


「あはは...石に...つまづいちゃったみたい!」


どうかな...走れたかな...不自然じゃない?


「先生...トイレ行ってきます...」


胸を押さえて、トイレへ逃げ込んだ。


痛い...苦しい...


ポケットから、薬を出す。


飲めば...マシになるはず...


トイレに座って息を整える。


爪の先が紫色になってる。


走っちゃったよ私...


今日だけ...普通の人と同じことをした。


10分ぐらい経って、また運動場のベンチに戻った。


「莉奈大丈夫だった??」


「石につまづいちゃってさー!恥ずかしいよー」


「転けたんだあれ!やば!なにしてんのよ〜」


ふぅ、バレなかった。
< 4 / 79 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop