どら焼きにホイップを添えて

そして迎えたデート当日。車を出してくれた倉田さんは私が兄と一緒に住んでいるマンションのそばまで迎えに来てくれた。

倉田さんから着いたと連絡をもらい、玄関を出て行く前に兄の叶夢(とむ)に声をかける。

「じゃあ、出かけてくるね」

兄は私の働く洋菓子店vanillaの社長で、派手な金髪がトレードマーク。これから仕事があるらしくネクタイを締めている途中で、こちらに歩み寄りながら「今日なんかあったっけ?」と聞いてくる。

「うん。道重堂の倉田さんとデート」

「倉田……? ってお前、あの職人のおっさん?」

怪訝そうな兄ににっこり微笑み、答えを告げないまま「じゃあね」と言い残して家を出た。

今日の私の服装は、ふわふわしたピンクのニットワンピ。ポケットの部分がファーになっていて、思わず抱きしめたくなっちゃう小動物な感じをイメージしたつもり。

足元は歩きやすい黒のショートブーツで、川越さんぽもばっちりだ。

マンションのそばに止まっていた倉田さんの車は、丸いライトが可愛らしいレトロなクラシックカーだった。

そのセンスの良さにきゅんとしながら運転席の窓を覗き、「こんにちは」と微笑みかける。

すると彼は窓を開け、「助手席にどうぞ」と少し緊張の面持ちで言ってくれた。

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