どら焼きにホイップを添えて

それから数十分が経過した頃、ようやく二人とも作品が完成したのだけど。

「いいね、味がある」

「……もう、いびつと言ってくださっていいのに。それに比べて倉田さんのは売り物みたいですね」

「まぁ、俺は初めてじゃないから」

作業台に二つ並べると、あからさまにきれいな形のお皿と、不格好なお皿が並んだ。その対比がおかしくて、二人で顔を見合わせて吹き出す。

「ふふ、難しかったけど、楽しかったですね」

「ならよかった。これから一週間くらいかけて乾燥させて、それから素焼き、絵付け、釉薬(うわぐすり)をしたら、本焼きになる」

なるほど……私、あまり深く考えずに、今日作ったら今日持って帰れるのかと思ってたけど、陶芸ってなかなか工程が多いんだな。

「じゃあ、またここに来なきゃダメなんですね」

「毬亜さんが忙しかったり面倒だったら、俺がひとりで来て勝手な絵をつけちゃってもいいけど」

どうする?と尋ねるような視線に、私はフルフル首を横に振った。

「いえっ。……私、また倉田さんと一緒に来たいです」

ドキドキしながら素直な気持ちを告げ、彼の顔を覗き込む。

「うん。じゃあそうしよう」

倉田さんは穏やかに微笑んで、頷いてくれた。

やった……これで、少なくともお皿が完成するまでは何度かデートができる。

緩みそうになる口元をきゅっと引き締め、私は長いこと自分たちの作品を眺めていた。



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