どら焼きにホイップを添えて
それから、築百年を超える町家造りのレストランで、川越名物のサツマイモをふんだんに使った懐石ランチをいただいた。
小さなお店だったけれど、平日だからか席に余裕があり、窓際の特等席に案内してもらえた。
そして情緒たっぷりの街並みを眺めながら川越の味覚を堪能し、食後はコーヒーを飲みながらゆっくり彼と話をした。
「毬亜さんは、お休みの日は普段なにをしてるの?」
最初は敬語で話していた彼だけど、デート中徐々にくだけた口調になっていて、そんなささいなことでも私の胸はいちいちときめいた。
「休みの日も、お菓子の研究してることが多いです。ゆっくりテレビを見ようとしても、食べ物が映るとつい〝これ、使えそう〟とか〝アレンジしてみたい〟とか思っちゃって……職業病ですね」
「いや、俺もそうだからよくわかるよ。食べ物に限らず、植物や動物、海や山や森……目に入るもの、全部が菓子作りのヒントになる気がして」
倉田さんがそう言いながら、窓の外の景色を目に映す。
今もきっと、あちこちから和菓子作りのヒントを探しているんだろうな。