どら焼きにホイップを添えて
「わかります。私も、ガーデニングの番組見ながら、ケーキのデコレーションのこと考えたりしますもん」
「毬亜さんは本当に一生懸命だな。フィールドは違えど、先輩職人としてはこれからどんな素晴らしいパティシエに成長するのか、楽しみだよ」
「いえいえ、そんなに言ってもらうほどでは……」
仕事に対する姿勢を褒められ、うれしいようなくすぐったいような気分になった。しかしその反面、どうも彼は師弟関係のような感覚で私に接している気がして、少し胸がモヤモヤした。
「あの、倉田さん」
「ん?」
「先輩職人でなく、男性として……今私とこうしていること、楽しいですか?」
……正直私は、とても楽しい。もっと倉田さんと話したい。彼の顔をずっと見ていたい。
でも、たった一度デートしてもらっただけで舞い上がっているのは私だけなんじゃないかって思うと、切なくて胸が痛くなる。
その想いを視線に込めて倉田さんをじっと見つめると、彼は気まずそうに視線をコーヒーに落とし、カップを手に取るとひと口啜った。
そして、しばらく沈黙が続いたあとで、ようやく彼が口を開く。