どら焼きにホイップを添えて
レストランを出た後は倉田さんから手をつないでくれ、菓子横丁で懐かしい駄菓子をお土産に買ったり、ふたりで着物をレンタルして記念写真を撮ったりした。
そしてレトロモダンな洋食店で夕食を済ませ、帰りは車でマンション前まで送ってもらった。けれど、あまりに楽しい時間を過ごしてしまったために、私は駄々っ子のように車から降りるのを拒否していた。
「……帰りたくない」
「またすぐに会えるから、な?」
倉田さんにたしなめるように言われると、自分の子どもっぽさが恥ずかしくなって、駄々をこねるのはおしまいにした。
「……約束ですよ?」
そう言って切なげな視線を送ると、倉田さんは大人の余裕を感じさせる微笑みを浮かべて、運転席から少し身を乗り出す。
そして私の前髪を指先でそっとよけると、額にちゅっと唇を押し当てた。
わっ……、今、おでこにキスした……!?
途端に私の顔はぽうっと熱くなってしまい、おでこを手のひらで押さえて困ったように倉田さんを見つめた。