どら焼きにホイップを添えて
こうして最近の俺は、若手とのジェネレーションギャップに戸惑い、けれどそれを口には出せずに心の中で嘆くことが増えた。
これは老いなのか……? いや、若手とうまくやろうって試行錯誤してる証拠だ。怒鳴る回数だって、こう見えて減らしてるんだぞ?
自問自答しながら営業時間を終え、厨房の後片づけを若手に任せて通用口から店を出る。
「寒っ……」
一月の冷たい空気が頬を刺し、思わず身震いしたその時だった。
「倉田さん! よかった~、待ってたんです!」
なぜか外にミニスカートを穿いた若い女性が立っていて、俺の姿を見つけるなりパッと花が咲いたような笑顔になった。
「ど、どちらさんですか……?」
二十代前半くらいの、若さと生足が眩しいその女性に、俺はまったく心当たりがなく困惑顔になる。
すると女性は「そっか、いつもコックコートだし」と独り言を言って、自分を指さしながら自己紹介をした。
「vanillaのパティシエ、平川毬亜(ひらかわまりあ)です。……って言えば、わかってもらえます?」
……ああ! あの一生懸命なパティシエのお嬢さん!
少々自信なさげに俺を見つめる毬亜さんに、俺はようやく笑顔を返した。