どら焼きにホイップを添えて

「失礼しました。イベント以来ですね、毬亜さん」

俺と彼女は、ついこの間パリのとあるイベントで菓子作りの一騎打ちをした。

結果は俺の勝利だったが、彼女の腕にも目を見張るものがあった。

そして敗北の後で悔し涙を流していたことで垣間見えた負けん気の強さにも、俺は同じ職人として好感を持っていた。

「しかし、俺に何のご用でしょう。社長は本社のはずですが……」

彼女は我らが道重堂の社長、道重彰と親しくしていて、兄妹のような仲である。だから、社長に用があるならわかるのだが……。

「待ち伏せって言ったら、告白しかないじゃないですか」

「え?」

なぜか頬を赤らめてはにかむ彼女の言葉が理解できず、眉根を寄せる。

今、告白と言ったか? ……いったい誰に何を?

「好きです」

不意に飛んできた四文字の意味を、脳は全く処理しようとしなかった。

すきです……隙です。 酢、黄です。 す、き、で……ダメだ、理解不能すぎて……。

「私、イベントの日に、倉田さんに一目惚れしてしまったんです! よかったら、お付き合いしていただけませんか?」

畳みかけるように一気に言われ、ガシッと両手を握られた。毬亜さんの目は、頭上に輝く星のようにキラキラ光っている。

……なんだこれ、夢? 俺、この若い女性に、告白されているのか……?



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