恋なんて、しないはずだった
「シャレになんねーよ。なぁ、ミヤの下の名前って何」

「宮下大和」

「ありえーねーよ。なんでこんなとこで〝大和〟に再会すんだよ」


碧が俺と付き合うまでずっとずっと好きだった元彼。
こんなとこで再会するとか、しかも俺が再会させるとかありえない。


「ちょっと、大和。やめて」

「俺、ずっと碧のこと探してた!紹介してもらうのが碧とか俺らやっぱり運命じゃん」


ミヤは、碧じゃなくて碧の友達のことを俺の彼女だと勘違いしているらしい。
ミヤのことを考えると事実を告げるのは酷な気がするけど、俺だって黙ってなんかいられない。
碧がこうして抱きしめられているところなんて見たいわけがない。


「ミヤ。違う」


ミヤと碧を引き離して、2人の間にたつ。


「大我.......」

「違うって何が?」

「碧は俺の彼女だから。運命でもなんでもねーよ」

「.......っ、え?」


その瞬間、碧を見つけた時からの笑顔が消えミヤの表情が歪んだ。


「ごめん。碧のことこのまま連れてく。トモダチもごめん」


この場にこのまま残ることなんかできなくて、碧の手を握って俺は走り出した。


「た、大我」

「ごめん、いまはこのまま着いてきて。碧の部屋行かせて」

「う、うん」


俺のとこは男子寮だから、女子禁制で入る時慎重にならないと寮長にみつかってしまう。
碧のとこは階で分けられているものの、女子専用ではないから俺でも普通に入れる。
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