恋なんて、しないはずだった
「ごめんな、いきなり走り出して。疲れたろ」


近くとはいえ、物凄い勢いで走って連れてきてしまった。
息切れをしている碧のことを抱きしめる。


「ううん。こっちこそ大和のことごめん」

「いや、あれは不可抗力っていうかまさかミヤがあの大和だとは思っもいなかった」

「あたしもこんなに近くにいたなんて.......」


そういえばミヤに初めてあったとき、慎吾に似てるなって思ったことを思い出す。
同じ地元だからってあの時点で大和に繋げられるほど、賢くはない。


「ところで、なんでミヤなんて呼んでるの?」

「へ?サクも呼んでるし普通じゃねーの?」

「サクも大和って呼んでたのに.......それに大和、自分の苗字が嫌いだったから呼ばれたがってなかったのに会ってないうちに変わったのかな」

「なーんで、俺といるのに元彼のことばっか考えてんのかな?」


グイッと引っ張って、ベッドの上へと横たわらせる。


「あ、ごめん。つい.......」

「後悔した?俺と付き合ったこと」

「.......え?」

「だって、俺と付き合ってなきゃあのままお前らまた付き合えんだろ。俺が邪魔?」


自分でも何を言ってるかなんてわからなかった。でも、沸いてしまった不安は簡単にななくならない。

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