恋なんて、しないはずだった
「あたしは、大我といられる事が幸せだよ」

「.......碧」


──ブーブー
大我があたしへ手を伸ばそうとした瞬間、大我のスマホのバイブが鳴る。


「大我、電話?」

「あー.......いや、べつにあとからかけ直すからいいわ」


着信を告げるスマホの横のボタンを押し、バイブを止める。
誰かからの電話に出ないってのは、初めてのことだった。
あたしといても普通に電話に出るし、メッセージの返事も返す。
それは、あたしにやましい事がないからだって思っていたから少しだけ気になってしまう。


「え、珍しいね。彼女も大事だけど、友達も大事だってのが大我なのに」

「べつに友達じゃねーし」


そう言った大我の表情がどこか傷ついた顔をしていて、それ以上は何も言えなかった。


「.......んなことより、来月の夏休み帰るよな?」

「うん。実家の方にね」

「それって、ミヤの地元でもあるんだよな.......?」

「まぁ、ね。でも大和は仕事してるみたいだし、お盆休みくらいしか帰省しないんじゃない?」

「仕事してるなんて、聞いたわけ?」

「大我が言ってたじゃん」


どうやら大和のことになると大我は冷静ではいれないらしい。
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