恋なんて、しないはずだった
「碧?」


玄関から出ようとしていたとこで、後ろから声をかけられる。
振り向かなくたって、誰の声かなんてわかる。


「.......大和」

「大我に会いにきてたのか?」

「.......まぁ、ね」


大和の顔をみることもせず、そのまま玄関を出ようとしたあたしをグイッと引っ張って「待って」と止める。


「な、に」

「大我に会いに来て、なんでそんな泣きそうになってんの」

「.......え」

「わかるよ。碧の表情なんか.......。何年見てきたと思ってんだよ」


大和の言葉にドキッとしないわけはないけど、あの時はあたしの話聞こうともしてくれなかったクセにって気持ちが上回る。


「大丈夫。大和に心配されるようなこと、何もないから」

「大我、女の子連れてきてたけど。それと関係あるんじゃねーの?」

「どっちにしても大和には関係ないから!」


大和のことをつきとばして、そのまま寮を飛び出す。

ここで大和に揺らいでしまうワケにはいかない。
さっきは勇気がでなかったけど、ちゃんと明日聞こう。あたしたちは隠し事なんてないはずなんだから。

でも、いままであたしだけだと思っていた距離感に別の女の子がいることがすっごく苦しくて。
こんな風に嫉妬を大和にはしたことがなかった。

でも、それは大和があたし以外の女の子を邪険にしてたからなんだけど。
同じことを大我にも求めるつもりは全くない。

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