恋なんて、しないはずだった
「ってか、そんなことより。いいの?おわなくて」


ポイッと俺に向かって自分のスマホを投げてくる。


「は?」

「見てみなよ」


瑠樺の表情に嫌な予感しかしなくて、俺は急いで瑠樺のスマホを操作する。


「.......なんだよ、これ」


──いま、玄関行けば碧ちゃんのことモノにできるよ
瑠樺がメッセージを送った相手のスレッド名は〝大和〟


「なんで、お前がミヤのこと.......つーかお前早く帰れよ」


ミヤのことなんで知ってるのかは気になったけど、そんなことよりもやるべき事がある。
俺は急いで部屋を出て階段を駆け下りる。


「大我に会いに来て、なんでそんな泣きそうになってんの」

「.......え」

「わかるよ。碧の表情なんか.......。何年見てきたと思ってんだよ」


ふたりの話し声が聞こえて、俺の足はすくむ。
碧の腕をつかむミヤのことを引き離してやりたかったけど、泣きそうな顔に碧がなっているのはたしかで。
そんな顔をさせているのは、何もないとはいえ、俺だから。


「大丈夫。大和に心配されるようなこと、何もないから」

「大我、女の子連れてきてたけど。それと関係あるんじゃねーの?」

「どっちにしても大和には関係ないから!」


碧が大和のことを突き飛ばして、寮から出ていく。

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