恋なんて、しないはずだった
「幼なじみって.......前に言ってた」

「あぁ.......やだよな。ごめん」

「再会したの?」

「うん。たまたま入った店でバイトしてて.......それから結構な頻度で連絡がくるようになった」


本当はちゃんとこういうことも碧に伝えておくべきだったんだろうけど、特に影響もないかと言わずにいた。
まさか寮にまでやって来るとは思ってなかったし、ましてや碧のことを知ってるなんて当然思うわけもなかった。


「そっか.......」

「ごめん、すぐに言わなくて。なんもないから」

「うん.......」


笑顔で頷いてくれるけど、その笑顔に元気がないことはわかってる。


「碧、もう俺の寮に来るな」

「.......え?さっきの子が来るから?」


あぁ、俺はいつからこんなに言葉が足りなくなったのだろう。
前はストレートにちゃんと言えたのに、大事になりすぎてきちんと言葉を紡ぐことができない。
好きになりすぎて、不器用になる。


「あそこ、ミヤが結構な頻度で来る」

「あぁ.......」

「さっき、仕方ないことだけどめっちゃら嫌だった」


自分が原因で傷つけておいて、虫が良すぎる話だけど。
それでも、俺はやっぱり碧のことを独占したいらしい。

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