恋なんて、しないはずだった
「大我が嫌がると思って、ちゃんと突き放したから」

「見てたからわかってる。何も無いって」

「あ、これ。忘れてったでしょ」

「あぁ、ありがとう.......」


碧が手に持ってた財布を俺に差し出す。


「なんで、あの子が来てるのに寮に呼んだりなんかしたの?」

「あれは、あいつが勝手に.......」

「やっぱりあの子まだ大我のこと、好きなんだ」


分かるくらいに表情を暗くする碧。


「大丈夫。俺にそんな気は今も昔もないから」


俺が好きになったのはこの世にただひとり。
碧だけしか俺は好きになったことがないから。


「ごめんな。嫌な思いさせて」

「ううん。また明日にでも電話するね」


そのまま碧は寮の中へと入っていった。

本当なら一緒に碧の部屋にいって、傷つけた分だけ愛したかったけど、まだ聞かなきゃいけないことが残っているから。


「なぁ、なんでお前がミヤのこと知ってんだよ」


部屋に帰ってやたらとくつろいでいる瑠樺の腕を掴んで立たせる。


「あたしが隣町に引っ越したことは知ってるでしょ?」

「まぁな」

「学校は違ったけど、バイトが一緒だったの」

「へぇ.......」


そんな嫌な偶然なくていいのに。
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