恋なんて、しないはずだった
「去年も夏祭り行ったよね」

「うん。あん時はまだ付き合ってなかったんだもんな」

「ね。1年で距離が全然違う」


去年の夏休みはまだ大和のことが好きだったんだよな。


「ミヤのこと見るの禁止」


チラッと振り向いたあたしのことをぐいっと前に向かせる。


「.......ごめん」

「謝るとリアルになるから、謝んな」

「.......うん」


最近のあたし達は変な波風は立たずに仲良くやってると思う。
でも、それは上辺だけだって多分ふたりとも気づいてる。
2人ではなすのはもちろん今まで通り楽しいけど、お互いにきちんとしなきゃならないところから逃げているのはわかっている。

でも、口にしてしまえば最後な気がするから、お互い蓋をしてる。
その蓋が外れてしまわないように、必死でいるんだ。


「しっかし、先に言いたかった」

「え?」


突然触れられた髪の毛に首を傾げる。


「可愛いってミヤが先に言ったの悔しい」

「.......あ」


さっき大我の様子が少しおかしく感じた理由がいまになってわかる。


「碧が可愛いなんてわかってるのに、先に知ったのはあいつなんだよな」

「.......大我」

「でも、これからは俺にあるから。だから今日先に言われたのがすっげぇ悔しい」

< 140 / 157 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop