恋なんて、しないはずだった
大我にそんな顔をさせたくて、一緒にいるわけじゃないのに。
そんな顔をさせてしまっていることに胸が痛くなる。


「こんなこと言ってもどーしようもないって分かってんのに。ごめんな」

「謝る必要なんかないよ。大我のことが一番すきだから」

「うん。ありがとう」


本当のことだけど、きっとこんな言葉気休めにしかない。
いまの大我にいちばん毒なのが大和の存在だから。
二人でいる時は極力大和の話題を避けても、こうして会ってしまっては避けられない。


「食べ物買ってくるか。碧ここで待てる?それだと並ぶのキツイだろ?」

「え?いいの?」

「うん。任せとけ」

「じゃあ頼んじゃおうかな」


あたしの返事に大きく頷いて、大我は屋台へと走っていった。

大我が歩くのがはやいので、ほかの人たちはうまく撒けたし、きっともうふたりきりになれるだろう。
恋人として初めての夏祭り、ふたりでいたいと思っているのはあたしも大我も同じだから。


「ねぇ、一人でいるの?」


大我の背中を見送ったあと、スマホを取り出して視線を落としていると頭上からそう声をかけられる。


「.......はい?」

「ひとりなら、俺らと回ろうよ」

「いや、彼氏待ってるんで.......」

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