恋なんて、しないはずだった
「えー?なんだよ、彼氏いんのかよー」

「食べ物買いに行ってくれてるだけです」

「へぇー、ま。いいじゃん。俺らとイイコトしようよ」


あっと思った時には既にグイッと腕を引っ張られていた。


「いや、離してください」

「いいじゃん、楽しい方が」


この人たちはあたしの言葉なんか聞く耳を持っていない。
自分の都合のいいように話をもっていってる。


「いや.......」


ブンブンっと腕を振って、彼の手を離そうとするけど力が違いすぎて全然ビクともしない。

また、あの時と一緒.......?
千景くんがあたしのことを好きだと言ってくれて、 返事をしないように言われたからしなかっただけなのに。
勝手にあたしの気持ちを決めこんだ千景くんに、夏祭りの最中こうして連れ去られそうになった事があった。

あの時は、あたしがいないことに気がついた大和が助け出してくれたんだ。


「あの、やめてください!警察呼びますよ?」


出せる限りの声を出せたとき、もう神社の裏の人気のないところまで連れてこられていた。


「警察なんて呼べねーって。そんな強気な態度取ったって、さわられりゃ鳴くんだろ。ほら」


ゾクッとするような笑みを浮かべた男があたしをじわじわと塀に追いやる。

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