恋なんて、しないはずだった
「やだ!やだ!いやだ!!!!」


これからされようとしてることが恐怖すぎて、ただそれだけを口にする。
もう他の言葉なんて紡ぐ余裕はない。


「おい、黙れや」

「いやーーー!」


あたしの声と同時にパチンっと音がしてとれた、髪飾り。


「邪魔くせーな」

「やだ!それ、返して!」


なくしたって構わないはずなのに、あたしは必死に取り返そうとした。
この髪飾りは三年前に大和から貰ったもの。


「碧!おい、碧から離れろ!」


そんな声が聞こえたと思ったら、いつの間にかあたしへかかっていた大きな力が消えていた。


「くっそ、痛てぇ」

「早く消え失せろ。じゃないと通報するぞ」

「やっべ、行くぞ」


あたしに声をかけてきた首謀者が慌てたように仲間と一緒に走り去る。


「大丈夫か?碧」

「.......大和」


あたしのことを助けてくれたの助けてくれたのは、今回も大和だった。


「それ、俺があげたやつ」

「うん。これしかないからつけてた」

「返してって言ってて嬉しかった」


自分の着ていた上着を「目のやり場に困る」とあたしの肩へかける。

たしかに浴衣ははだけていたから、助かった。


「ありがとう。これくれたの助けてくれた時だったよね」

「そうだったな。お前夏祭りで連れ去られすぎだろ」


ポンっとあたしの頭に手を乗せる。

< 143 / 157 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop