恋なんて、しないはずだった
「なんで分かったの?」

「なんでだろうな。大我が碧を探してて、嫌な予感がしたんだ」

「あ、大我.......」


絶対に心配かけてしまってるだろう。
あたしはスマホを操作して、耳にあてる。


「そんなこと、させない」


スマホはあたしの手から抜き取られ、ギュッと抱きしめられる。


「や、大和.......」

「さっき心臓止まるかと思った。俺ならあそこで碧を1人になんてしない」

「大我は、千景くんのときのことを知らないから」

「俺の方が経験値高いから、今もこれからも碧のこと幸せにできる自信あるから」

「.......やめてよ」


大我のことを好きな気持ちは、これっぽっちも嘘じゃない。
でも、大和のことだって大好きだったからそんなことを言われて胸がぎゅっとなってしまう。


「これっぽっちも俺にチャンスない?」

「大和.......」

「俺、ずっと好きだった。忘れたことなんかない」

「そんなのあたしだって.......」


大和のこと忘れたことなんか一度だってない。


「じゃあ、俺を選んでよ」

「ごめんなさい。大我がいたからあたしは前を向けたの。今もこの先も大我といるって決めたの」


目の前の身体を押して、大和から離れる。

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