恋なんて、しないはずだった
「荷物これだけか?」


ふと、歩いていたら聞こえてきた声に足が止まる。


「うん。ありがとう大我。助かったよ」

「お前、泣き止まねーんだもん。どうしようかと思ったよ。でも、おばさん実家で1人の時じゃなくて、瑠樺のとこにいる時でよかったんじゃない?」

「たしかにね。でも心臓止まるかと思ったよー」

「まぁ、安心しろ。今日はついててやるよ」


あたしは勝手に、友達は男の子だって思っていたことに気がついた。
そして、大我がいま一緒にいるのは、瑠樺ちゃん。
大我と瑠樺ちゃんがどういう経緯で知り合ったのかはわからないけど、困ったときに咄嗟に大我を頼るくらいの仲だってことだけはわかる。


「友達だもん。友達のことは蔑ろにしないもん」


妙な胸騒ぎを感じるのは、瑠樺ちゃんと大我があたしなんかよりも長い年月を共にしているような気がしてしまうから。


「.......幼なじみ?」


ふと思い出した、大我の言う幼なじみ。
そういえば前に「瑠樺ちゃん」って大我のお母さんも言っていたことを思い出す。


「なんだ、瑠樺ちゃんだったんだ」


瑠樺ちゃんだってことに驚きはしなかった。
多分、瑠樺ちゃんはあたしと大我のことを知っている。
だから、あたしが苦手意識を持ってしまうような雰囲気を漂わせているんだ。

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