恋なんて、しないはずだった
普段あんまり人にお願いごとなんかしない。
そんなあたしの勇気を振り絞ったお願いだったから。
それが叶えてもらえなかったから、さすがにこれ以上ワガママになんかなれるわけがない。


「話聞いてくれてありがとね。そっち帰ったら会おう」

『まだそこにいるの?』

「うん。断られたけど、なんとなく来てくれる気がするから」


大我はあたしのことをいつだって考えてくれるから。
だから、少しくらい遅くなったって来てくれる気がするんだ。

それに、アズと話してなんとなく気が楽になった。
「こんな時間までこんなとこで........なにやってんの?」

「........え?大和?」


フッと黒い人影が目の前に広がったと思って、見上げたら大和の顔があった。


「もう、21時だよ?誕生日にこんなとこで一人で........大我は?」

「友達のお母さんが倒れちゃって........」

「で、なんでお前はこんなにとこにいんの?」

「ここが待ち合わせ場所だったから、いつか来てくれるかなって........」

「バカだろ。風邪引くから帰るぞ」


大和があたしの腕を引っ張って立たせる。


「いやだ!大我が来るまでここにいるの!」

「変な意地張ってんなよ。つーか泣くな」


大和があたしの涙を拭う。
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