恋なんて、しないはずだった
「俺んとこに戻る気がないなら、俺にそんな隙見せんなよ」

「大和........」


大和の表情はとても傷ついた顔をしていた。


「俺は碧が好きだ。もう、離したくなんてねーんだよ」


グイッと引っ張られて、気づいたときには唇に柔らかいものが触れていた。


「大和、ダメだよ........」

「向こうだって女のとこにいんなら同じだろ」

「違うよ!全然違う!」


あたしは大和とキスをした事実を消したくて、腕でゴシゴシと擦る。


「なんで、こんな風に寂しくさせるようなヤツがいいんだよ」

「大我はいつだってあたしの事を1番に考えてくれるもん」

「考えてくれてねーから、こうなってんだろ!?俺なら絶対に碧を1人になんてさせない」

「大和にそんなこと言う資格はないよ。あの時、あたしを一人にしたのは大和だよ。あれがなかったらあたしは今も大和の隣にいたよ」


すべては今さらだ。
なにもなければあたしはいまも大和の隣にいたのはたしかだろう。
でも、現実は大和はあの噂から逃げ、あたしはそんな孤独から大和を捨てて逃げたんだ。

その結果、あたしは大我に出会って恋をした。
それが全てなんだ。


「そうだよな、ごめん」


あたしの言葉にハッとしたような顔をする大和。


「だから、もう大和と付き合うとかそういうことはないから。ごめんね」

< 153 / 157 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop