恋なんて、しないはずだった
「あー!とにかく!お前が一員じゃないとかねぇから!」


「う、うん」



杉浦くんの言葉には不思議な力があると思う。
まだ、誰かと関わるには怖いけど、杉浦くんの言葉だけは信じてもいいようなそんな気がしてしまう。



「お前、今日あいつらに傷つけられたのか?」


「傷なんて、つかないよ」



いまさら、何を言われても傷ついたりなんかしない。
あたしは、傷だらけだから、もう傷つく箇所なんかない。



「ねぇ、俺が碧の心を癒すから」


「.......え?」


「せっかく、Tシャツに名前も入れたんだ。俺のとなりに。この通り俺のとなりにいろよ」


「.......っ、杉浦くん」



突き放そうと思うのに。
何度も何度も、突き放したいって思ってるのに。
あたしの心の中に杉浦くんは、すんなりと入ってくる。



「あたし、そんなふうに思ってもらえるような人じゃないよ」



平気で仲間を捨ててきちゃう、大好きな人でさえ捨ててきちゃう。
そんな人間なんだから。



「どんなんだっていい。俺はお前がここに来てくれて良かったって思ってんだ。いまはそれでいいだろとりあえず」



ニカッと白い歯を輝かせて笑う杉浦くんは、とても眩しかった。

でも、彼のことを見失いたくない。
そう思った。

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