恋なんて、しないはずだった
「お前こそ誰だよ。俺は碧のこと守るって決めてんだ。碧が怯えてる以上、ここを退けるわけにはいかねーんだよ」


「怯えてるわけがない。碧は照れてるだけだよ。本当は俺のことが大好きなんだから」


「好きな男だったら、こんなにガタガタ震えるわけねーだろ!」


「.......なっ、嬉しさのあまり震えてるだけだろう」


「あんたは、碧のなにをみてるんだ。好きだとか言うわりに、碧のことなんもわかっちゃいねーだろ」



トンっと、千景くんの肩を押す。



「碧に近寄るな」



背中しか見えないから、杉浦くんがどんな表情をしているのかはわからない。
でも、目の前にある大きな背中が逞しく見えて仕方なかった。



「あーれ、何の騒ぎ?」



その場に似つかわしくないような声。
松波くんの声だ。



「な、なんだコイツ.......。アイツに似て.......」



千景くんが、松波くんを見て震え出す。



「は?あいつ?ってかあんた誰だ?」



松波くんが千景くんを見て怪訝な顔をする。

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