恋なんて、しないはずだった
「なんでだよ、俺のことすきだって「そんなこと言ったことない。勘違いさせてたならごめんなさい」



こんなふうにはじめからハッキリと告げられていたら、結果は違ったのかもしれない。
でも、あの頃のあたしにはそんな勇気がなかったから。

きちんと伝えずに逃げることしか考えられなかった。



「.......っ、もういい」



松波くんの手を離して、力なく歩いていく。



「千景くん!」



あたしは彼の背中に向かって叫ぶ。



「千景くんが純粋に気持ちを伝えてくれた時、本当に嬉しかったよ。でも、あの時勘違いをさせてしまってごめんなさい」



千景くんに向かって、深々と頭を下げる。



「もう、見えなくなったよ。顔、上げなよ」



グイッとあたしを引っ張ってくれたのは、杉浦くんだった。



「お前、あんなふうにハッキリと言えるんだな。びっくりした」


「うん。杉浦くんとか松波くんとか水戸さんのおかげかな。わかんないけど、勇気がでてきた」



千景くんとのことは、あたしがあの街からでてきた直接的な原因ではないけど、関節的な原因ではある。

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