恋なんて、しないはずだった
「なんでかなー?学校ではメガネかけて、前髪で顔隠してさ。なんのためにしてるの?こんな可愛いなんて知らなかったよ」


「やめてよ、そういうの」



可愛いとか、そういうの思われるだけで吐き気がする。



「なんで?俺、今褒めてるよ?」


「褒めるとかいらない」



あたしは、嫌われるくらいが丁度いいのだ。

だから、転校した学校では密かに生きよう。存在を消そう。
そしたら、きっと好かれることはない。



「じゃあ、なんでさっき俺がもしかしてって言ったときに認めたわけ?」


「.......っ」



認めたあとにしまったって思った。
この街にきてから、半月。
誰かに自分の名前を呼ばれるのが久しぶりで、まさかそれを自分が嬉しいと感じてしまうだなんて思ってなかった。



「お前、本当は1人がいいなんて思ってねーだろ」


「思ってる!あたしは、1人が似合ってる!」



痛いところをつかれそうで、そう叫ぶだけで精一杯だった。
そうしないと自分を保つことができなそうだったから。
この人に飲み込まれてしまいそうだったから。

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