恋なんて、しないはずだった
「ねぇねぇ、おにいちゃんのかのじょ?」


「おま.......っ!そーいうことどこで覚えてくんだよ。ちげーよ」



俺の顔は赤いに違いない。



「だって、ぼくもかのじょいるもん」


「はぁ?おい、幼稚園児の分際ではやいぞ!」



弟の大登はまだ5歳の年中だ。
いまどきのガキはこんなにはやいもんなのか?



「ふふ、大我ちゃーんとお兄ちゃんなんだね」


「はぁ?なんだよ、それ」



そんな微笑ましいものを見たという感じで柔らかく笑わないでくれよ。
そんな顔をされたら、俺だって頬が緩みそうになってしまう。



「あたし一人っ子だからさ、なんかこういうの羨ましい」


「そっか.......じゃあ、たまに俺んちにくればいーじゃん」


「え?大我の家に?」


「べ、別に変な意味じゃないぞ。こいつと遊んでやってってことだよ」



なーんか、わかんねぇけど碧の前だと調子が狂う。
言わなくていいこととか言っちまうし。
こんなの俺が碧のことを好きみたいじゃねぇか。そんなつもりであの時声をかけたわけではないのに。

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