恋なんて、しないはずだった
「そうやって叫ぶってことは、本心じゃねぇ証拠だろ」


「.......っ、なんで放っておいてくれないの?いつもなら、あたしのこと知らんぷりするじゃん」



そうなるようにあたしは仕向けてるんだから。
知らんぷりして欲しいから、そう振舞ってるんだから。



「あぁ、知らんぷりというか存在にも気づかないことが多いな」


「だったら、そのままでいてください。お願いします」



存在に気づいてくれないことがあたしの本望なんだから。
彼の言葉に傷つく必要はない。



「いやだね、俺は興味があんだ。お前に」


「そんなもの、持って欲しくない」



特に男の子には、あたしのことを見て欲しくない。
特にこと人には、あたしのことを見てもらいたくない。
危険な気がするんだ。



「碧」


「.......へ」



突然呼ばれた名前にふと顔をあげてしまう。



「名前、碧だったよな?」


「そうだけど.......」


「これからは、碧って呼ぶから。俺の事も大我(たいが)って呼べ」


「いやだよ.......」



名前で呼びあうなんて、そんなことしちゃダメだ。

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