恋なんて、しないはずだった
この人、そうだ。
杉浦(すぎうら)くんだったな、名前。



「杉浦くんって呼ぶ」


「なんで、そこ頑なに変えねーかな」


「杉浦くんが女の子ならきっと呼べた」


「は?なにそれ。お前もしかして男が苦手なわけ?」


「まぁ、そんなとこ」



別に苦手とか苦手じゃないとか、そんなことはどうだっていい。
ただ、関わりたくないだけだ。



「ふーん、なるほどね」


「だから、関わらない.......「うん。俺のやり方でやってくわ」


「は?話聞いてた.......?」



あたしの希望はまるで無視。



「俺が関わりたいんだよ。絶対に俺と関わってよかったって思わせる」


「.......は?」



この人、この自信はどこから沸いてくるのだろうか。



「お前から笑顔を引き出してみせるから」


「いやいや.......」



笑い方なんて、覚えてない。
あの日から、自分を偽ることに慣れすぎた。
楽しいなんて、思ってはいけないと覚えた。

だから、あたしが笑うことなんか、ないよ。

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