恋なんて、しないはずだった
「碧?どうかした?」


「.......ん?」


「なんか、難しい顔してんぞ?」



戻ってきた大我があたしのことをみて、首を傾げてる。



「いや、大我は相変わらず人気者だなーって」


「なんだそれ」


「そんな人気者が隣にいるのがたまに申し訳なくなる」


「.......なんで、そうなんだよ」



あたしの言葉に大我の眉間にシワがよる。



「だって、そうでしょ?こんな、クラスの中で目立たないように生きてるやつがクラスの人気者と仲良くしてるって.......正反対じゃん」


「お前さ、いつんなったら分かるわけ?俺がお前といたいからいるって何回も言ってんだろ」



大我の言葉はいつだって、真っ直ぐあたしに向けられる。
でも、臆病なあたしはその言葉を素直に受け取れないでいる。
本当は嬉しいくせに、ウジウジと悩んでしまう。



「.......うん」


「なぁ、抜け出そ」


「え?」


「いま、すげー誰にも邪魔されず碧といたい」



大我の言葉に動けないでいるあたしにはお構いなしで「行くぞ!」と、あたしを立たせて、あたしのカバンも大我が持つ。

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