恋なんて、しないはずだった
「.......あれ」



大我のことばかりが浮かんでくる頭を振り払うように、歩いていたいると後ろから、足音が聞こえることに気がついた。

最初は、学校からの帰り道だし誰か後ろを歩いていることもあるだろうと大して気にしていなかった。



「これって、つけられてるんじゃ.......」



あたしが走ると、その足音と早くなって、止まると止まる。

これは、確実にあとをつけられてると確信した。
でも、怖くて後ろを振り向くなんてできない。
勘違いであってほしいと何度も思ったけど、怖さはなくならなかった。



『なんだよ、お前.......帰るの断ったくせに』



咄嗟にスマホで電話をしたのは、大我。
声の様子からも不機嫌な様子が伺える。



「たい、が.......」


『碧?』


「つけられて、こわくて.......」



上手く話せなくて、伝わっているかもわからない。



『おい、いまどこだ!?』



伝わっていたのだろう、大我が慌ててる様子がわかる。



「くすの、こうえ、まえ、どうろ」



この間も、あたしの後ろから一定の距離を保たれてるが、恐怖はもちろん募るばかり。

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