恋なんて、しないはずだった
『クスノキ公園だな!?』


「うん.......」


『おれ、近くにいるから!すぐ行けるから電話切るなよ!なんかあったら叫べ!』


「うん.......」



大我の力強い声がどんだけあたしの力になっているか、この人は分かっているんだろうか。



『だから、言ってんだろ。1人で帰るなっていつも』


「うん.......ごめん」



走っているのだろう、息を切らして話を続ける。



『もう、一人で帰るとか言うなよ.......たく』



心配しているのか、怒っているのか。
もう、両方なんだろうな。

でも、恐怖に襲われたとき、真っ先に頭に浮かんだのは大我だった。
大我だったら、あたしを救ってくれるって思ったから。



『「碧!」』



スマホを当てている方の耳と、当ててない方の耳。
両方の耳から大我の声が聞こえる。



「大丈夫か?」



ちらっと後ろを確認してから、あたしに小声で耳打ちをする。



「大我と電話して、少し落ち着いた」


「そっか、よかった。本当は、あとをつけてきたやつをどうにかしてやりたいけど、今は碧のほうが先決だな」



ポンッとあたしの頭に手を乗せる。

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