恋なんて、しないはずだった

✎*思い出の1ページ

「ちょっと、俺、部屋片付けてくるからリビングで待っててくれる?」


「うん」


あの日以来、大我の家によくお邪魔するようになった。
お母さんもお父さんも、お兄さんの樹生(たつき)くんもあたしによくしてくれているから凄く嬉しい。



「あ、碧ちゃん。いらっしゃい」


「樹生くん。お邪魔してます」


「碧ちゃんさ、転校してきたって言ってたよね?」


「え?はい」



樹生くんの質問の意図がわからず、首を傾げる。



「ずーっとどこかで見たことがあると思ってたんだけど.......碧ちゃん隣町の我妻(あずま)高校にいた?」


「.......え?」



まさか、樹生くんからあの高校の名前が出てくるとは思わなくて、自分でも目が見開いていくのがわかる。



「俺、去年まで付属大学にいたんだよね。で、教育実習がそこだった」


「.......え」



あたしの脳裏に浮かぶのは、うちのクラスにきた教育実習生の姿。



「碧ちゃん、思い出したよ。キミ、大和の彼女じゃん」


「.......っ」



まさかのこんなところで大和のことを知ってる人に会うなんて、思ってなくて言葉が出なくなる。

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