恋なんて、しないはずだった
「なんか、兄貴のほうが碧のこと知ってるみたいで悔しいな」


「お前さ、碧ちゃんのことになるとすーぐに独占欲むき出しにすんのな」


「しゃーねーだろ。碧に関しては俺が1番でいたいんだから」


「無理だろ。大和には勝てねーよ」



樹生くんの言葉に一瞬、その場が凍りついた気がする。

あたしも、大我も何も言葉にできなかった。

それは、肯定を意味してしまう気がしたけど、樹生くんの言葉を否定できない自分もいて。



「あら?シーンとしてどうしたの?」



沈黙を破ったのは、帰ってきたお母さん。



「お、おかえり!母さん!」



大我はホッとしたような顔になって、お母さんを出迎える。

大我のことを無理させてしまっている自覚はある。
それでも、この気持ちだけはなくせるものではなくて。
それでも、大和にはもう会うことはないと分かっているから、この気持ちを忘れなくてはいけなくて。

大我の限界が来てしまって、あたしから離れていくのが怖い。
ここに来た時は、誰にもそばにいて欲しくないと願っていたのに。
大我にだけは嫌われたくないと思ってしまう。

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