恋なんて、しないはずだった
「よーし、碧ちゃん座ってー」



お母さんがあたしのことを椅子へと座らせる。



「え?」


「ほら、大我も横に」


「あぁ」


「なーに、気まずい顔してんのよ!樹生も座んなさい」



お母さんなりに、なにか空気で感じ取ったんだろうか。
場を和ませてくれてる。



「そして、はい!」



帰ってきた時に持ってきた袋から箱を取り出して真ん中に乗せる。



「え?」



それは、どうみてもケーキの入っている箱にしかみえなくて。



「碧、主役なんだから今日は遠慮せずにたくさん食えよ」


「え?え?」



ポケットに入れたスマホで日付を確認すると、11月11日。



「あたし、今日.......」


「なんだよ、自分の誕生日だって気づいてなかったんかよ」



フッと笑ってあたしの頭を撫でる。



「さっきのことなんも気にしなくていいから。俺よりもそいつの方が碧のこと知ってるのなんてハナからわかってるから」


「大我.......」



「だから、今日はなーんも気にせず、お前は祝われておけばいーの」



特大の笑顔であたしの頭を撫でる。

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