恋なんて、しないはずだった
「誕生日おめでとう。碧」


「.......ありがとう」



大我の言葉はいつだって、あたしの心を暖かくしてくれる不思議な言葉。



「俺、まったく今日何が行われるか知らされてなかったんだけど.......」



向かいの席で当事者のあたしよりもぽかんとしている樹生くん。


「いいだろ。兄貴はそこにいるだけで別に」


「誕生日だって知ってたらわざわざあんなこと.......ごめん。嫌な気持ちにさせたよな」


「いえ、大我が塗り替えてくれたので大丈夫です」


「しかし、うちの弟があんなにアピールしてるのに碧ちゃんも頑なだよね」



樹生くんは切り替えたようで、いつもの樹生くんに戻っていた。



「だって、あたしに大我はもったいない」



あたしは、大我に大事なことを何も言えてないし、言えないし。
きっと大我が好きだと思ってるあたしは、本当のあたしなんかじゃない。

本当のあたしは、全然綺麗じゃないから。



「もったいないってなんだよ。俺がお前がいいって言ってんのに、そんなんで応えないつもりなら、応えてくんねー?」

< 68 / 157 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop