恋なんて、しないはずだった
「.......っ、バカ。そんな簡単じゃない」



大我の気持ちに毎日のように触れて、揺れないわけじゃない。
でも、揺れちゃダメだって自分を必死立たせてる。

あたしは、恋なんてする資格がもうないから。



「微笑ましいわねー。大我がこんなに女の子に夢中になるなんて」


「あんま見んなよ。あーやっぱりここに連れてくんの失敗だったなー」



なんて、言いながら本当は大我は家族のことが大好きだ。



「つーか、俺より先に兄貴が碧に会ってたのマジで気に食わねーわ」


「そんなどーしようもない話して、本当にガキだな。大我は」


「兄貴よりも5歳も若いからね!」


「大和に比べてもね」


「兄貴、その名前出すのはどーかしてる」



ふんっと樹生くんから顔を背ける大我。



「樹生くん、あたしからもお願いを大和の名前は出さないで欲しい」


「わかってるよ。もう大我にも碧ちゃんにも言わないよ。俺は見守ってるよ」


「ありがとうございます」


「兄貴なんて、面白がってるだけだから礼なんて言う必要ねーよ!行くぞ、碧!」



怒ったようにあたしの手をとって、あっという間にリビングからあたしを連れ立って出ていく。

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