恋なんて、しないはずだった
「大我.......」



息を切らして、部屋のドアを閉めた大我に声をかける。



「悪ぃ。大人気ないよな、本当」


「そんなことないよ」


「みっともねー嫉妬。自分が誰かにこんな風に嫉妬するなんて思わなかったんだよ。恋って.......やっかいだな」



はぁっとため息をついて、ベッドに座る。



「恋すると.......みんなそうなるもんなんだと思う」


「碧も?」


「ん?」


「その、大和ってやつのことで嫉妬.......すんの?」



遠慮がちにあたしを見上げる。



「まぁ、昔はね。いまは、そんな場面もないから」


「少しは否定しろ。バカ」


「あ、ごめん.......」



大我の前だと、どうしてもつい本音が出てしまう。



「そんなに好きなら、なんで離れたんだよ」


「.......逃げてきたって言ったでしょ」



あたしは、自分を守ることができれば、よかった。
自分を守ることに必死だったあたしは、大和との思い出を捨てることを選んだんだ。

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