恋なんて、しないはずだった
「わ、すごい.......解けそう」



大我が書いてくれた公式に当て嵌めて、問題を数問解いていく。



「ほら、言ったじゃん。碧は絶対解けるって」


「でも、公式を見ないで解けるかなぁ.......」


「大丈夫。岡センの出題傾向ならわかるからヤマ張ってこ」



トンっと背中をたたいて、あたしに笑顔をみせる。

岡センというのは、うちの担任のことだ。



「ありがとう、大我。なんかすごい自信ついてきた」


「碧はさ、やればなんでもできんだよ。だから諦めないでいれば未来
は明るいよ」


「.......うん」



なんだろう。
勉強のことを言われてるはずなのに、違うことを言われている気がしてしまう。

大我といれば、あたしにも明るい未来が見れるんじゃないかなんて期待してしまう。



「さて、碧さん」


「なに?改まって」


「追試受かったら、ご褒美ちょーだい」



あたしに向かって右手を差し出す。



「あたしへのお祝いじゃなくて?」


「ご褒美くれたら、俺もお祝いするから」


「ご褒美は?なに?」


「クリスマス、デートしよ」



あっけなく言われたその言葉に、あたしはゆっくりと顔をあげる。

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