恋なんて、しないはずだった
違う、ここはあそこじゃない。
すぐにみんなさっきのことなんて忘れる!

そう、自分言い聞かせるのに周りには、前のクラスメイトしか見えない。


ダメだ、ここに今いたら、崩れてしまう。



──大人しそうな顔して、結構やるのねー


──ねぇ、辛島さん。俺ともどう?


──すぐにヤラせてくれるんでしょ?



浴びせられた言葉たちが頭に降ってくる。

ここにいたら、泣いてしまう。
涙なんて誰にも見せなくない。
誰にもあたしの心は見破られたくない。


泣きそうになるのを、震えだしそうなのを必死に隠しながら、あたしは教室を飛び出した。



「せっかく逃げてきたのに.......」



走り抜けて、前に誰かが教えてくれた屋上へとたどりつく。
前にも、色々と限界がきたことがあって、その時にもらった屋上の鍵。
靴の色が違うから先輩だった。
その人の顔もわからないけど、お礼も言えないけど、いつか会えたら「ありがとう」と言いたい。



「やっぱりここか」



屋上について、柵に寄りかかって座ったところにドアがあく。

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