恋なんて、しないはずだった
「わ、大我顔真っ赤」


「バカ言うなよ。これでも必死なんだって」



恥ずかしそうに顔を両手で覆う。



「大我はいつもあたしに正面からぶつかってきてくれるね。はじめから」


「だって、俺、たぶん俺しか知らないお前を見つけた段階でもう好きだったもん」


「その時はそんなことなかったんじゃないの?」


「気づかなかっただけで、好きだったんだと思う。だから、あんなにしつこくつきまとったんだよなー」



はは、っと可笑しそうに笑う。



「大我がしつこくしてくれたおかげで、今のあたしがあるんだよ」


「なんだそれ、嬉しいじゃんか」



あたしの手をとって握りしめる。



「俺、お前の一番近い存在になれてる?」


「どう考えてもいま、あたしに一番近いのは大我だよ」



大我の存在は間違いなく大きい。



「あのとき、しつこく碧に話しかけてよかった。俺、本当に碧のことが好き」


「.......ありがとう」



今は、まだ同じ気持ちは返せない。
でも、確実に着々とあたしの心の中は変化を見せている。

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