恋なんて、しないはずだった
それは、誰にも言っていないあたしの夢だった。
大我に話していたつもりもなかった。



「ほら、大登と遊ぶときあるだろ?」


「あ、うん」


「大登と遊んでるときの碧すげぇ、楽しそうでさ。コイツ保育士に向いてんだろーなって思ってて」


「うん、楽しんではいるよ」


「まぁ、うちの複雑な事情で大登はあまり帰って来れないけど.......それでもアイツは碧のことが大好きでさ」


「.......うん」



大登くんと大我の弟だけど、大我の家には住んでいない。
子供ができなかった、お母さんの妹夫婦の養子として育てられているんだ。
大我のことを「おにいちゃん」と呼ぶけど、本当の関係性はわかっていない。



「碧なら、いい保育士になれんだろーななんて思ってたんだけど、俺見ちゃったんだよね。碧が通り道の保育園の前で立ち止まってるとこ」


「.......あ」



家の近くの保育園。
そこはいつも子供たちが賑やかに遊んでて、子供が好きなあたしにはいい場所だった。



「それが碧の夢ならできるだけ叶えて欲しい。これ.......」



カバンから1冊のパンフレットをだす。

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