恋なんて、しないはずだった
｢あたしも、大我と一緒に上京したい｣



幼なじみに会うかもしれないという不安はあったけど、それ以上に大我と離れるほうが嫌だった。
今のあたしの精神を保てるのは、大我といる時だから。

一緒にいないと、残してきた元彼とか幼なじみのことを考えてしまう。
逃げてきた事実に自己嫌悪に陥ってしまうんだ。

だから、大我といる瞬間があたしの安らぎになっている。



｢俺も碧を連れていきたい。離れたくなんてねーもん｣



後ろから腕が回されて、ぎゅっと抱きしめられる。



｢この先、なにがあっても碧のこと愛すから。俺の事見ててくれよ｣


｢.......うん。大我とこの地で出会えてあたし、幸せだよ｣



あの日、大我のバイト先に行ってなかったらあたしはどうなっていたんだろう。
未だに誰とも関わらないまま、静かな日々を過していたのだろう。
大我にあの日会ってから、あたしの日常はガラリと変わった。

未だに学校でメガネを外すことも前髪をあげることもできないけど。
それでも今こうして幸せをかんじられるのは、大我がいてくれるからだ。

< 90 / 157 >
表紙・目次

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop